ARTCOURT Gallery

Exhibitions

石塚源太 「多相皮膜」

2019. 7. 2 [tue] - 9.21 [sat] 11:00-19:00 (土曜日17:00まで) ※日・月・祝、8/11 - 8/19 (但し、7/21[日]は開廊)

アートコートギャラリーでは、伝統的な漆芸を核に制作を続ける石塚源太の個展「多相皮膜」を開催します。
 乾漆技法で制作された《感触の表裏》シリーズより全高150 cmとなる最大作品や、その三次曲面の「皮膜」を半立体化し新たな空間へのアプローチで見せる新作、金箔と古い枡を用いた《Untitled (Hung in a box)》、つややかな「表面」の奥行きを宇宙的なスケールまで広げる超越的な平面作品《Dual Phase》、漆の制作工程を「皮膜」層の重なりで融合させるモノタイプへの挑戦など。本展では約15点の新作で空間を構成し、二次元と三次元を行き来しながら他に類のない漆造形で「表面」や「皮膜」を探求する、石塚の思考と造形をご紹介します。

石塚源太は、京都市立芸術大学在学中に漆工を学び、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでの交換留学を経て、大学院修了後の2000年代後半より美術家として作品発表を始めました。漆を素材にさまざまな表現を探るなか、“漆に宿るつや”に自ら魅了され、そのつやによって生じる新たな知覚や、見る者の意識を触発する「皮膜」の存在、思考と作品を一致させ素材の現象を通して見せる抽象造形の可能性に着目していました。以来、石塚は、漆特有の透明な「皮膜」を境に行き交う意識や感覚をその手で捉え、塗面と空間、観者に反照させることで、つやがもたらす未知なる世界へと働きかけています。
 そのものの形を漆で「皮膜」として表し、そのつやに宿る知覚や奥行きなど、それらすべて内包し、石塚の作品には多くの「相」を含んでいます。近年では特に、「皮膜の隔たりとその周辺」をキーワードに、鏡面のように磨き上げられたつやと、そのつやに映り込む世界に関心を寄せ制作に取り組んでいます。
 《感触の表裏》(2015-)は、球体の凹凸が連なる三次曲面を乾漆技法で仕上げ、「皮膜」を自立させた立体作品シリーズです。内から発する膨張エネルギーやトルソのような形状を感じさせる佇まいは、原型に発泡スチロールの球体と伸縮性の布を取り入れることで生まれ、表面の張りに宿るつやがその形を際立たせています。制作初期の頃から手掛けている蒔絵の技法を用いた平面作品では、ワッシャー、針、カッターナイフの刃などの金属片を無数の星々のように漆黒の闇に漂わせ、宇宙的なイメージの広がりや奥行きへの意識化に加えて、物質の起源への問いを生起させます。
 また、漆を扱い制作することで、漆の歴史や過去に作られた工芸品や生活用具にも積極的に接し造形感覚を磨くようになったという石塚は、信仰と素材との関係にも興味を深め、半立体の三次曲面を金箔で覆い、古道具屋で入手した江戸・明治期の枡の中に掛けて見せる新たな作品展開を始めました。懸仏の存在や枡の中に恵比寿像を入れて商売繁盛を願った人々の風習や文化にならい制作したこの《Untitled (Hung in a box)》は、乾漆技法が仏像製作に用いられ表面には金箔が施されてきた歴史とも繋がるものです。
 東アジア圏を中心に、漆器をはじめ生活の中で培われてきた漆塗りの技術は、日本において高い水準に達し世界的にも名高く浸透しています。徹底した磨き上げや刷毛跡を残さない仕上げ処理を施す背景には、素地の質が色彩や輝きとなって表面に現れ出ることを重要とする、日本人の精神性が見出せるのではないかとも言われています。石塚はつやに映り込む虚実から、「皮膜」の存在を通して見えてくる内実へと、制作意識を昨今さらに深化させています。
 昨年はロンドンにて初個展を行い、今年は「Loeweクラフトプライズ」ファイナリストに選出されており、京都市芸術新人賞も受賞しました。本展は、グローバルにも注目が集まる中での意欲的な新作個展です。会期中には、日本とアジアの現代美術を中心に研究・キュレーション活動をされている片岡真実氏との対談も予定しています。石塚が制作を重ね捉えゆく、研ぎ澄まされた漆造形と「皮膜」から開く新境地にご期待ください。

関連イベント

  • 07.21 [sun] 14:00-16:00 ※終了しました
    対談【 片岡真実( 森美術館 副館長兼チーフ・キュレーター) x 石塚源太 】
    *要予約( Email: info@artcourtgallery.com または TEL: 06-6354-5444)
  • 07.21 [sun] 16:00-17:00 ※終了しました
    レセプション

協力

  • 京都市立芸術大学

出展作家

石塚源太