ARTCOURT Gallery

Exhibitions

牡丹靖佳「gone before flower」

2016.01.10 [sun] - 02.06 [sat] 11:00-19:00(土は11:00-17:00)*日・月・祝休廊  *2016.01.10[sun]は11:00 -17:00開廊 *冬期休廊 : 2015.12.27[sun]-2016.01.05[tue]

この度、アートコートギャラリーでは、牡丹靖佳(ぼたん・やすよし)による約3年ぶりとなる個展を開催いたします。
牡丹は1971年大阪生まれ。ニューヨークで絵画を学び、帰国後は東京で制作をおこないながら多数の展覧会に参加、2012年にはアメリカのPollock-Krasner財団より助成授与作家として選ばれるなど、実績と評価を積み重ねてきました。当廊で3度目の個展となる本展では、新作を中心とする絵画作品約20点や今年9月のスウェーデンでのレジデンス期間中に制作された8点組のドローイングなどをご紹介します。

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〈作品・展示コンセプト〉
 存在の移ろいゆくさまを描くことによって留め、目に見えない不確かな事象を絵画を通して確かめようとしてきた牡丹靖佳。こうした目的のもと、彼はこの世界をかたちづくる物事の関係性を注意深く観察しながらその仕組みを解体し、色や形を基準とする独自のルールによって、謎めいた密やかさと情緒を感じさせる絵画表現として再構築します。

 花よりも 人こそあだに なりにけれ ※1

 自己と他者、此方と彼方など、はっきりと隔てられているように見える存在や領域がときに溶け合い、ときに入れ替わり、その境界線が非常に曖昧で流動的なものとして感じられるという経験は、この世界に潜む不確実性、あるいは儚さのひとつの現れといえるでしょう。
 本展では、平安時代より詠み継がれてきた和歌の一節を通奏低音として、存在の間に結ばれるそうした関係の不確かさ、複雑さを、絵の具の物質性と表象性のせめぎ合い、抽象と具象の融合、モチーフと背景の反転といった絵画における現象を通して引き出すことを試みます。色彩の境界は地平線へと変容し、筆痕の集積からは森の木々が浮かび上がり、遠景と近景がいつの間にか切り替わる揺らぎをはらんだ空間。そこでは、中心となるべきモチーフは曖昧なシルエットとして抽象的な色と形の連なりのなかに隠される一方、木の枝、ロープ、煙といった何物かの断片、何事かの予兆あるいは余韻と思しきものたちは、緻密な線で写実的に描き出されています。
 静かに、しかし絶え間なく位相を変化させる絵画空間のなかで、それらの異質な要素が暗号のように結びつく画面に向かい合うとき、私たちの認識は、鮮やかな色面の間に生じる緊張や細密な線が纏う気配、はっきりとは描かれていない存在の息づかいと触れ合いながら、見ることの歓びとへと開かれてゆきます。絵画空間に内在する儚さ、不確かさを共有することで、私たち一人一人の間にもたらされる静かな交感と共鳴――。牡丹の表現世界のさらなる深化をぜひご高覧ください。


註1
人の死と散る桜に寄せる心情を重ね合わせ、この世の儚さと不確かさ、存在の移ろいゆくさまを詠った和歌の一節。
「花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれをさきに 恋ひむとか見し」
紀茂行 古今和歌集巻十六「哀傷」より

関連イベント

  • 2016.01.10 [sun] 14:00〜15:00
    対談
    [菅谷富夫(大阪新美術館建設準備室 研究主幹)× 牡丹靖佳]
    *要予約(Email: info@artcourtgallery.com または Tel: 06-6354-5444)
    *対談・レセプションともに参加費無料
  • 2016.01.10 [sun] 15:00〜17:00
    レセプション

出展作家

牡丹靖佳