ACG Reflections 2: 移行のメソッド -川田知志、野村仁、村上三郎-
2025. 8.19 [Tue.] – 9.20 [Sat.] 11:00−18:00 [土曜日−17:00] 日・月 休廊
「ACG Reflections」は、豊かなキャリアを持つ作家の表現に焦点を当て、作品に通底する要素や展開の系譜を改めて見つめ直す企画展です。
戦後関西における美術表現は、鋭い感受性をもつ作家たちが、自らの身体を通して素材や空間と向き合う実験的なアプローチによって展開されてきました。彼らの作品は、固定した「もの」に帰着せず、行為や現象、変化のプロセスの「動き」として提示され、また前作の再解釈として異なる素材や手法で制作される場面もしばしば見られます。
本展では、村上三郎による<紙破り>とその瞬間を捉えた記録写真(1956)、野村仁の《重心の移動》《カメラを手に持ち腕を回す》などにおける身体動作を映像で捉えた作品(いずれも1972)、そして川田知志による壁画の描画・解体・移設(2025、弊廊にて制作)といった実践も取り上げます。
三者それぞれのユニークな制作への取り組みを通して、関西の戦後から現代にかけて脈々と続く、移動・身体・空間と造形表現の関係を見つめ直す機会となれば幸いです。
関連イベント
- 9月20日 [土] 公開作業
【川田知志】 ギャラリー展示室からの壁画の引き剥がし
※詳細は弊廊のウェブサイト、SNS等でお知らせします。
出展作家
漆喰と顔料で描くフレスコ技法を大学で学び、公共空間での壁画制作を主軸に作家活動を始める。展覧会における制作過程で自ら「壁画の移動」を繰り返し行い、描画・解体・移設の一連の行為が壁画制作の基盤となる。物理的な移動に加え、記憶や空間の意味も同伴するその行為は、絵画に内在する「場と記憶の関係性」を問い直す実践である。近年はストラッポ技法を応用し、アイコニックに描いた現代の都市風景のイメージを引き剥がすパフォーマンスも公開しながら、可変性を獲得した壁画の新たな可能性を追求する。
【主な展覧会】「 Re: Human-新しい人間の条件展 / Study: 大阪関西国際芸術祭2025」(船場ビル/大阪/2025)、 「MOTアニュアル2025 こうふくのしま」(東京都現代美術館/2025)、「川田知志:築土構木」(ザ・トライアングル、京都市京セラ美術館/2024) 、「川田知志:彼方からの手紙」(アートコートギャラリー/大阪/2022) 他多数。
重力や時間とともに変化する物質の様相をカメラで捉え、1960年末より写真を主要な作品とする彫刻表現をスタートさせる。70年代半ばには天体の動きにレンズを向け、以来、身 の回りの事象や生の営みが崇高でダイナミックな自然の秩序に基づく関係性に関心を深めてゆく。扱う素材やメディアも多様化し、宇宙の起源、生命の誕生、地上生物の進化過程 といったスケールで「時」を記述し、物の成り立ちや現象の背後にある「モト」を照射する独自の空間表現を探求した。
【主な展覧会】「 コスミック・センシビリティー」(アートコートギャラリー/大阪/2024)、「Re: play 1972/2015―『映像表現 '72』展、再演」(東京国立近代美術館/2015)、「野村仁:変化する相-時・場・身体」(国立新美術館/東京/2009)、「野村仁-移行/反照-」(豊田市美術館/2001) 他多数。
協力:有限会社野村研究室
◎ 村上三郎 (1925-1996) 具体美術協会の主要メンバーとして活躍し、パフォーマンスアートの先駆けともいえる〈紙破り〉をはじめ、戦後の美術史に新たな地平を切り拓く。インスタレーションやコンセプチュアルな作品とともに、多くの絵画作品を制作。具体開催後も既成のジャンルや技法にとらわれず、「今、此処」を軸とした形に残らない表現を積み重ねた。村上の制作は、思考と行為、時間と空間が渾然一体となった「現象」や、十全な実感を得る「経験」として、「生きること」に向き合い、その一瞬一瞬を掴みとるための手段だった。
【近年を含む主な展覧会】「 開館30周年記念 特別展 限らない世界/村上三郎」(芦屋市立美術博物館/2021)、「村上三郎展」(アートコートギャラリー/大阪/2017)、「村上三郎展」(芦屋市立美術博物館/1996)、「Hors Limites: L’arte et la vie 1952-1994」([限界を越えて] ポンピドゥー・センター/パリ/1994) 他多数。