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Past Exhibitions

村上三郎 展

2017.10.14 [sat] - 12.09 [sat] 11:00-19:00(土曜日は17:00まで) *日・月・祝 休廊
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  • トーク
    堀尾貞治(美術家)× 山本淳夫(横尾忠則現代美術館学芸課長)

    10.20 [fri] 18:00〜19:00

  • レセプション

    10.20 [fri] 19:00〜20:00

  • *対談は要予約
    (Email: info@artcourtgallery.com または Tel: 06-6354-5444)
    *参加費無料

本展について

この度、アートコートギャラリーでは村上三郎展を開催いたします。

本展では、村上の代表作、木枠に張ったクラフト紙を突き破る〈紙破り〉について、国内に唯一現存する痕跡としての《入口》(1955/2003)、ʼ80~ʼ90年代に行われたパフォーマンスの映像、そして、1956年の第2回具体美術展で写真家の大辻清司によって捉えられた《通過》の連続写真による多角的な展示を通し、その諸相を映し出すことを試みます。
さらに、それらの〈紙破り〉を、立体作品《空気》(1956/1994)、ʼ50~ʼ60年代の絵画作品とともに通観することで、村上が実践した身体的行為と描くこと、そしてコンセプチュアルな表現の関係性について改めて考え、そこに通底する問題意識を探ります。


村上三郎の代名詞とも言える〈紙破り〉は、しばしばパフォーマンスの先駆として、また、画面の破壊によって絵画における既存の枠組みを解体し、その本質と新たな可能性を追求した試みとして位置づけられます。しかし、作家自身にとってそれは、物質と自らの身体・精神の衝突において生み出されるものを掴み取りたいという好奇心から出発し、木枠と紙の内部に閉じ込めた時空間を一挙に解放することによって自己の存在をも自由に解き放ち、そこから得られる「今、此処」そして「生」の実感に向き合おうとする極めて私的かつ根源的な欲求にもとづく表現行為でもありました。

村上は〈紙破り〉を通じて、時間と空間、必然と偶然、自己と他者といったテーマを身を以て検証しようとしましたが、「生きること」と分かちがたく結びついたこれらの諸問題は、絵画作品においても様々な形で提起されています。塗料を盛ったカンヴァスを下向きにしたまま一晩放置することで生み出された作品(1957)は、時間の経過と重力の作用によって必然と偶然が渾然一体となり創出された画面空間を生々しい物質性とともに提示しています。支持体の上にカンヴァスを貼り付けた作品(1959)では、平面的な絵画の構造が異化され、描かれたイメージは空間的・時間的な奥行きを持つものとして鮮やかに経験されます。

〈紙破り〉やこれらの絵画に体現されるように、村上の表現には、世界との関係の中で織り成される存在の様相を捉えようとする真摯な姿勢が貫かれていますが、それは常に、経験的な知識や予測、意図などに縛られることなく、ひらすら自己を突き詰めた先にある無心の状態に近づこうとする独自の哲学と表裏一体のものでした。1960年代後半の絵画作品では、カンヴァスに貼りつけた紙片の輪郭に沿って筆を運ぶことにより、曲線と直線、色面からなる緊張感に満ちた形象が描き出されています。そこには画面の創造という〈紙破り〉とは対照的な表現形態において自己の意識を乗り越えようとした作家の、作為と無作為による拮抗の軌跡が刻まれているかのようです。そして、展示の都度ガラス板を組み立てる《空気》は、〈紙破り〉同様、その場の空気を封じ込めることが意図された作品ですが、それは作家が追い求めた無心、さらには、まだ形を持たない不安定ながら豊穣なイメージの現出そのものとの出会いを暗示しているようにも思われます。

村上は、〈紙破り〉についての後年のメモで、次のように記しています。

‒‒‒‒予め其処に何かが在るような気がして探求するのでは無い。
  何かというのが何であるのか実体の予感が無くてもゼン(蠕)動する
  活力が行為を導くことによって或種としか言い様の無い
  心理的昂揚に達する。
  私が紙を破るパフォーマンスの中で獲得したものは
  “語り得ない気”である。

予測や作為によって固定された実体ではなく、自由なエネルギーに満たされた無心の行為から今まさに生まれ出ようとする未分化の「何ものか」に触れた時、それに呼応するように自らの「生」が鮮やかに立ち現れる。村上にとって表現することとは、その瞬間を経験するための飽くなき挑戦だったのではないでしょうか。


*1:
パフォーマンス後に残される物質、つまり破れた紙と木枠から成るオブジェクトのことを指す。
*2:
村上自筆のメモより。「ʼ91・5・29 2:00AM」と日時の記載がある。

出展作家

  • 《作品》1957
27 x 22.5 cm | 合成樹脂塗料、カンヴァス
*初出:1957, 第3回具体美術展(京都市美術館)
  • 《作品》1957
27 x 22.5 cm | 合成樹脂塗料、カンヴァス
*初出:1957, 第3回具体美術展(京都市美術館)
  • 《入口》1955/2003
267.5 x 190 x 6.5  cm | 紙、木枠
*2003年のギャラリークラヌキ(現アートコートギャラリー)での村上三郎展において、作家子息の村上知彦が制作。 [実施日:3月29日]
撮影:加藤成文(アートビジョン
  • 《作品〈空気〉》1956 (再制作:1994)
 21 x 21 x 21 cm | ガラス、セロハンテープ
*初出:1956, 第9回芦屋市展(精道小学校、芦屋)
  • 《作品》1959
91 x 72.5 cm | 合成樹脂塗料、カンヴァス
*初出:1959, 第8回具体美術展(京都市美術館/小原会館、東京)
  • 《作品》1960年代後半
224 x 180 cm | 合成樹脂塗料、紙、綿布

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